ウミガメのさと浜(砂浜)を守ることが、私たちはもっとも適切な保護活動だと考えています。
既にアカウミガメなどウミガメを、もっとも有効に守るのは、陸域でできる活動としては「砂浜」を守ることだと考えています。もちろん、ウミガメの生態を知るための調査は、地道に継続的に続ける必要はあります。しかし、その調査も出来るだけ生態に負荷をかけないように、務めるべきです。 私たちができる保護活動として、表浜ネットワークは「ウミガメのさと浜づくり」という取り組みを行っています。それはウミガメの発生(生まれる)する環境である、唯一の砂浜という自然を守ること。もしくは、少しでも返してあげることが出来るのなら、その砂浜を自然に戻して返してあげようと。子ガメに着目しがちですが、その卵をシーズンに500個近く産卵する親のウミガメに自然の砂浜を返してあげるだけで、その後も何十年も産卵が続くのです。今在る産卵できる環境を守り、少しでも自然の砂浜を再生し、返してあげることが大切なのではないかと思います。

それではどうやって砂浜を守ったり、返してあげるの?
砂浜は確かに守るとしても、何から手をつけていいのか、漠然として大変です。まずは砂浜の仕組みを知る必要があります。砂浜の砂は海岸では「波」と「風」で動きます。海の中は当然、私たちの手では直接的に関わることは出来ません。砂浜として関わるのは陸側、そう、風を利用する事になります。陸上の砂浜(実は海の中まで砂浜は続いています。外浜、沖浜と連続しています)は風が砂を運んでいます。その風を弱めるだけで、風は砂を放出します。放出された砂は時間が経てば、その場所に堆積します。この風を弱めるということを、垣根で行うのです。風速20mぐらいの風で、飛砂は約10cm程度(粒径や重さによって変わります)その程度の高さの障害物を浜辺に設置すれば、風が速度を落とすことで砂を放出し、それがやがてマウンド状に堆積するのです。その堆砂(砂が堆積する状態)はやがて、垣根を埋めるほどになります。埋まりきってしまったら、今度はその上に垣根を設置するのです。(堆砂垣の素材は自然に還元することに留意)その行いを繰り返すことで、堆砂がマウンドを大きくし、それが徐々に安定することによって砂丘に変わって行きます。※堆砂の山をボタ山と古くから呼びます。砂丘は海側にあたる砂浜が、侵食した場合、補完し合う関係にあります。(海側は沿岸砂州)言わば砂をストックしていると考えることが出来ます。局所的でも、砂をストックさせることで、侵食傾向の砂浜を保全する働きを持たせることになります。また、障害となってしまった人工構造物を局所的に砂で埋めて、障害を緩和させることが出来ます。

堆砂垣による養浜
堆砂垣とは砂を留める垣根です。それは目的によって静砂垣、砂防垣と呼ばれている垣根(Sand fence)と同じ働きです。静砂垣の場合は主に砂の動きを封じ込める働きがあります。砂防垣は陸域に進出する砂を留め防ぐ目的です。目的は違えど、働きは同じということを理解しておけば、色んな条件に於いても適切に使えます。 動的な環境である砂浜を養浜する柔軟な方法である堆砂垣は限られた箇所の効果であり、埋もれていくことを肯定し、自然の素材を使うこと。自然還元な素材で行う養浜であることが大切です。
※本来は堆砂垣は埋もれたり、波に流されたり、壊れたりすることも前提としています。それが動的な環境に適している条件でもあると考えています。
砂浜は動的な環境セル(一つの細胞のように働く)
砂浜は動的な環境と言われています。その意味は、陸と水(海水)をつなぐ、環境と考えると理解しやすいです。陸は固体、海水は液体、まるで違う物質の両方の性質をうまくつなぐのが、「砂」というどちらの性質も、持っている物質なのです。その砂浜の性質を理解し、自然の力を少しだけ、手を加え、助長するだけで、自然の砂浜は回復します。自然回復の性質は、まさに動的(砂が自由に動く状態)であるということが、とても重要です。
※堆砂垣の設置には管理側の許諾が必要となる場合があります。地域によって扱いが違う場合があるので、事前にご確認ください。専有許可を取得する必要があります。


設置場所は、前砂丘、もしくは浜崖部に行うと良いでしょう。
汀線に近づけるほど、飛砂を受け止めますので効果は期待出来ます。しかし、高潮や波浪時は流出しやすいことも検討しておく必要があります。※各海岸の条件によって違いはあります。
風向きなどとの関係も知っておく必要があります。設置角度により、堆砂に傾向が現れます。

堆砂垣の効果
もちろん、台風など波浪時には、堆砂垣も流されてしまうこともあります。それは汀線に近づくほど、砂の動きは大きいことから、効果も汀線に近づくほど出てきます。逆に流される可能性も高くなります。その都度、浜辺の状況を見極めながら、養浜を行うということになります。この養浜を2〜3年ぐらい続けると、砂丘も安定し始めます。海浜植生が拡がれば、それがさらに飛砂を受け止め、砂丘として拡張し始めます。

草方格という、もう一つの養浜
堆砂垣は高さがあり、その場所で砂を箇所的に堆積させる効果が期待出来ます。しかし、垣根が埋もれるのも時間が掛かったり、垣根自体が壊れたりすると、ある意味目障りな存在になりかねません。砂浜が常に動的であるということを考えてみると致し方無いのです。そんな場合を避ける手段として、面的な方法で養浜を行う方法が草方格と言えるのでしょう。草方格とは葦など、比較的に柔軟な草茎などを使って行う養浜方法です。草方格は元々、砂漠などの緑化に使われていました。砂を動かさないという効果が、植生の定着を促進させます。











さらに簡単に、粗朶という方法もあります!
粗朶とは間伐材などを利用して、砂浜に埋め込むだけの作業です。そう、風さえ、弱める効果が期待出来れば、実はそれほど拘る必要もありません。ただ、しっかりと認識しておかないといけないのは、自然に還元する素材であると言う事です。砂浜に埋もれて腐食分解され、自然に吸収される素材であるということです。