砂浜再生プロジェクト

Dune

アカウミガメを守るために、この砂浜を守る!

現在の表浜海岸

表浜海岸がどのような環境と時代を経て来たのか、わかってきました。表浜海岸は多様なつながりを持っており、砂浜という環境は自然も特異で、沿岸地域とも深いつながりを知ることができました。さて、そこで今、表浜海岸は素晴らしい環境なのですが、いつまでもこの環境が続くのでしょうか。表浜海岸の未来を知るには今、ある現状をしっかりと直視する必要がありそうです。この章では、現在、表浜海岸が直面している問題や課題について考えてみましょう。

減少する河川からの土砂供給

天竜川河口の土砂量の変化

海岸線の課題(繋がる海岸線に)

表浜海岸でもっとも懸念されているのが、シンボルでもある砂浜です。砂浜が減りつつある侵食は確かなようですが、よく知ってみると、全てが減り続けているばかりではないようです。表浜海岸の砂浜は天竜川からの土砂が沿岸流によって流され、漂砂となってこの沿岸に流れ着いています。沿岸砂州にいったん、溜まった漂砂は、徐々に波などによって陸に打ち上げられて、砂浜になっていくのです。このことは、流れる元が続く限りは大丈夫なことを意味しています。しかし、問題は供給元である天竜川では、様々な事情によってダムや堰などの開発が進み、土砂の流れが滞ってきました。この土砂の量が減少し続けている事から、海岸への漂砂も減少して来ることは否めません。ここからが問題でもあるのですが、漂砂が並行して流れる海岸にも変化が重なります。長い海岸線には必ず大小問わず、河川が海に流れ込んでいます。さらに表浜海岸が含まれる遠州灘には大きな汽水湖である浜名湖があります。このような陸水域と海の繋がる場所には何らかの防波設備が施されるようになります。
浜名湖の海と接する今切口は 1953年( 昭和28年)の台風18号によって決壊し、翌年の1954年(昭和29年)から築堤によって200mの固定化の工事がなされました。この今切口の導流堤と同様に沖合いに侵食対策として愛知県は豊橋市では1991年(平成3年)から離岸堤の設置などが進み、徐々に流下に流れるはずの漂砂に変化が生じてきました。漂砂の変化はまず、沿岸流の流れを弱める構造物の上流部は徐々に漂砂が溜まり、その漂砂は砂浜に蓄積されて、汀線(海岸線)が次第に海側へと前進して行きます。この場合は成果として侵食問題は改善されますが、問題は漂砂が減少してしまった流下側です。構造物の流下は漂砂が減少してしまったことで、徐々に沿岸砂州が衰退していきます。そして漂砂を砂浜に送ることが出来なくなって来た結果、砂浜が徐々に衰退し、砂浜の侵食が始まります。結果的に問題が移されただけのような形で、さらに侵食した砂浜を守ろうと何らかの構造物を造ると、さらにまた流下で砂浜が侵食が起きるという連鎖に陥ってしまいます。常に動いていた砂が滞ることで、このような状況が生まれてしまったのです。

海岸漂砂の減少 導流堤の問題

海岸線の課題(偏っていく海岸線)

沿岸流の上流から下流によって、漂砂が偏ることによって海岸線には様々な変化が起きてきました。砂浜が衰退し、なかなか回復できない段階で、台風などの暴波浪によって砂浜の砂が流されてしまう場合などは、今までならば、いったん沖の沿岸砂州が受け止め、台風通過後にゆっくりと砂を砂浜に戻していたという働きが作用しないという状況に陥ってしまったのです。このような状態になると本来、砂浜が持っていた再生能力が発揮出来なくなってしまいます。砂浜がやせ細ってくるとさらに陸上でも変化が起きてきました。季節風によって動く飛砂も受け止められなくなってしまったのです。これは前浜が極端に狭くなってしまうと、西から東へと空っ風に運ばれて移動する飛砂が前浜という受け皿を失ってしまい、定着しづらくなってしまうようです。それではどこに飛砂は行ってしまうかというと、風向きによっては海や陸側へと、飛砂は落ち着く所を探し求めているかのように、より内陸側にまで飛んでいったり、海に向かって飛ばされたりしているようです。このような状況になってしまうと、砂浜の再生能力としては期待出来ないでしょう。偏りがさらに助長されてしまうようです。

このように再生能力を失った砂浜は波が打ち付ける度合いも強くなっていき、潮も高く飛散するようになり、砂丘や背後にある植物にとっても、害となっていきます。塩分を含んだ霧が植物に及ぶことで、耐性の無い植物は徐々に枯れてしまうのです。これが厳しい環境に強いと言われる木々にとっても、枯らす要因となっていくのです。植物が枯れて無くなってしまうと、今度は土壌が風雨に直接さらされることになり、徐々に本当に陸地の侵食が進行していく結果となってしまいます。背後に植物が無く、もし居住域だとすると、家屋やクルマなど生活品が潮に覆われてしまいます。このような状況に陥ってしまうと、やはり、海岸線を守らなければと波消しブロック(消波堤:昭和48年度〜平成2年度)など、海岸に投入することにつながって行きます。
護岸構造物の設置で、海岸線は確かに守られるようです。離岸堤や傾斜堤などでいったんは海岸の侵食は和らぎます。しかし、いったん侵食した海岸の復帰はなかなか進まず、それよりも侵食を止める護岸構造物が今度は流下側に流れゆくべき漂砂を捉えてしまいます。この結果、この下手側の海岸ではこの海岸で起きた侵食が繰り返されます。そしてさらに食い止めようと、護岸構造物を設置することになります。そうすると・・・・このように、問題の先送りのように、他方に問題を移すだけで根本的な対策になっていないようです。これが負の連鎖として始まると、なんと海岸線に並行して、護岸構造物が設けられることになります。さて、ここの海岸は元はどんな景観だったのか?思い出すことも難しいぐらいに景観も環境も変わってしまいます。そうなると今まで、機能していた砂浜の仕組み、循環や交換の働きはどこに行ってしまったのでしょうか。砂浜と共に営まれてきた生物はどこに行ってしまったのでしょうか。既に気が付いたときは失った環境の大きさに愕然とするのみとなってしまうのでしょう。

海岸漂砂の減少 離岸堤

海岸線の課題(負のスパイラルを防ぐ為に)

いったん、侵食が始まると守ろうと思った対策が、下手側にさらに問題を送り込んでしまう負のスパイラルを、私たちは知ったわけです。そしていったん影響によって海岸の環境が変わっていくと、その海岸の環境に依存して活動していた生物相まで変わって言ってしまいます。海岸が変わってしまうと、今度は海岸の生物などを食べていた沿岸域を移動していた生物も、食べ物が無くなってしまったことで生存さえ、成り立たなくなってきます。徐々に沖合いのさらに大きな生物にまで影響を徐々に影響を与えていってしまいます。実はこのような海岸線は何も表浜海岸だけの問題でも無く、全国の海岸線で起きています。既に護岸構造物で埋め尽くされてしまった海岸線が増えつつあります。そして今は地球規模でも気候変動などの要因で、高潮や大型化する台風などによって、さらに海岸の侵食が進んでいます。海岸侵食の問題は既に海洋全体にも影響しつつあるようです。

人工化が進んだ海岸モデル

それではどのようにこの問題に向き合うのか、今、様々な試みが始動しつつあります。今までは目の前の侵食に向き合うのが精一杯だった沿岸の各自治体が、海岸線全体を見渡せるように連携を取り始めたのです。これは海岸線がつながっていると同様に、海岸の保全においても認識を共有し、侵食問題に向き合おうという試みです。このような試みは海岸の統合的管理(Integrated coastal zone management, ICZM)ともよばれています。表浜海岸が含まれる遠州灘全体を対象に、海岸保全に関する基本理念、基本方針を共有し、地域特性に応じて「防護」・「環境」・「利用」の調和のとれた海岸を目指すための共通の認識として、砂浜が重要と考え、整備を行うとしています。これは砂浜の砂は本来は動くものだと、動的な環境と捉えて海岸を保全していくと言うことです。できるだけ波消しブロックや潜堤(海の中に設置する護岸設備)に頼らないように設置は最小限に抑え、砂が届かなくなった海岸には養浜やサンドバイパス(砂が届かない所に送る)、サンドリサイクル(港湾など浚渫した砂を再利用)など、堆積する箇所の砂をうまく活用して漂砂のバランスを整え、局部的な侵食を抑え、沿岸全体の砂浜を効率よく維持していくことになりました。もちろん、直ぐに回復するには難しく、徐々に改善に向かうように取り組んで行くことになります。

海岸法の改正と共に

自然の砂浜を、私たちの手で、少しでも再生と保全を行おう!!

表浜海岸から始まる砂浜再生プロジェクト!「アカウミガメのさと浜を守ろう!!」