特定非営利活動法人表浜ネットワーク

表浜ブログ2012

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The East Asian Seas Congress 2009 Report
〜東アジア海洋大会議〜

The East Asian Seas Congress 2009 〜東アジア海洋大会議〜

今回は「Ecosystem Approach to Conservation and Fisherles Management.」のテーマにて渥美半島(表浜)の事例「At Omotehama Coast : Working together to create a new coastal community.」を報告する。

今回の報告では浅瀬域と砂浜・砂丘の連続性維持の重要性。衰退が進む小規模な漁業(地曳き網漁)を沿岸地域社会と海との接点として取り組む。小規模漁業を沿岸地域社会の新たな連携づくりの要素とすることで若い世代に海洋との関わりや関心を育み、新たなる沿岸地域社会の形成に役立てようという試みの紹介である。

 浅瀬域の変化:広域な開放型海浜である遠州灘(表浜)の砂浜は天竜川からの土砂供給によって形成された。南アルプス山麓からの土砂が天竜川によって運ばれ、海に放出されるのである。砂は一旦、河口部に堆積しテラス状となって備蓄される。供給口である河口から沿岸に生じる東西の沿岸流に砂が漂砂となって漂い沿岸砂州を形成する。一旦、沿岸砂州に留まった砂が波浪や潮位変動、向岸流、並岸流、離岸流によって運ばれ、打ち上げられて砂浜の形成となり、この動きが交互に行われ、沿岸砂州と砂浜の砂交換が行われる。このように形成された沿岸砂州と砂浜の浅瀬域はさらに小河川や湧水帯などを加え、砂交換と共に陸と海の物質交換の場となり栄養価の高い領域となる。この様な栄養化の高い領域は特に沿岸漁業の基盤となるイワシ、サバなど魚種の幼魚・仔魚、貝類などの生育場と言われている。また、背景として浅瀬域を取り巻く環境は様々な連続性が存在している。例えば緩やかな傾斜の砂浜から砂丘に移行する位置から始まるパイオニアプラントであるコウボウムギなどによって徐々に低草層から背の高い草木層に推移し、低木層、亜高木層、高木層と植生の連続性が形成され、その繋がりを利用して小動物が移動が可能となり、さらなる物質交換が行われる。逆に捉えれば浅瀬域から海岸に拡がる連続性を遮断することで海浜の機能を弱めることになり、生産性の低下を招くことになる。浅瀬域と取り巻く沿岸域の保全は働きや循環及び連続性を充分理解しておく必要がある。

連続性のある沿岸環境を保全するには、直接的な影響を与える沿岸地域社会が健全に維持されていることが重要である。しかし、今や沿岸地域を支えてきた産業である漁業は消費者の食生活変化に加え、流通の発展と共に衰退が進んでいる。利用が減少する場合は放棄的な社会活動や護岸など人工化によって安易な安定を求めがちになる。事例として過去の小規模な漁業に於いては沿岸の保全に働きかけていた経緯が認められる。ここに小規模な漁業は人と海の繋がりを築く効果があることを理解しておきたい。表浜海岸の漁業形態は集落単位の小規模な地曳き網漁が昭和初期まで盛んであった。理由として渥美半島の沿岸は大凡が砂浜なので大型漁船が使用出来ない。そのような状況から小型の地曳き網船を使った集落単位で就業する地曳き網漁が漁法として沿岸地域を支えてきた。魚種は主にイワシ・サバ・コノシロなどで、特に豊漁の多かったイワシは砂浜で乾燥させて乾鰯として堆肥にしていた。地曳き網漁を行うと共に乾鰯づくり作業から砂浜の広さが必要となり、粗朶などを用い養浜を行っていたのである。しかし、実際には小規模な漁業だけでは生計が潤うはずもなく、渥美半島の集落は農業も営み、必然的に半農半漁の生活であった。乾鰯を堆肥として利用し、地下水を井戸や揚水風車などを利用し汲み上げて農業を営んでいた。半島の台地性の地理・地形的条件から大河川は無く、常に水は乏しくて農業には厳しい環境であり、厳しい生活だったと伝えられている。
 昭和43年に渥美半島全域に豊川用水が通水し、堆肥は化学肥料に代わり、今までの農業とは大きく変貌していくのである。今までの海からの享受に頼ることなく、換金性の良い大型農業で生活が成り立ち始め、徐々に地曳き網漁は衰退を始め、操業する漁船は主に沖合を湾内などから来る大型機械船を使った漁業に明け渡すことになる。地曳き網漁が衰退すると共に海岸から人々の意識が離脱し始め、地域として海岸の捉え方にも変化が起きたのは免れない。
 時を並行して海岸自体も変化が起きた。海岸線へ砂の供給を行っていた河川がダムや堰など構造物により遮られ、流れ出る土砂が減少し始めた。供給源の減少と共に海岸線にも港湾や道流堤、離岸堤など構造物が造られ、沿岸流の上流側は堆積し下流側は消失するといった砂の流れに偏りが顕著になり始めた。漂砂が不安定になると、先に影響が出るのが海面下で目に見えない浅瀬域の沿岸砂州である。沿岸砂州が劣化を始めると波浪に対する砕波能力が低下し直接、波が砂浜に影響を及ぼす。直接波浪の影響を受け始めた砂浜は加速的に砂が摂られ始め侵食が進行する。沿岸砂州と砂浜が連鎖して侵食することで浅瀬域としての機能も減退し、元来持っていた生態系の生産性も低下し、漁業にとってはさらなる漁獲量の低下を招くことに繋がってしまう。このように浅瀬域を構成する沿岸砂州と砂浜は重要な領域である。

 社会的に衰退した漁業と、過剰な構造物で劣化した浅瀬域の再生は問題が相関しあっているが故に、環境と利用に新たなる均衡を持って取り組む必要がある。また、両者の問題は構造的なものであり、即効性ある解決策を見出すことは困難である。漁業に関しても漁業権なども絡み、誰で参加出来るという訳には行かない。
 そこで取り組みとして、広域な開放型の砂浜と沿岸砂州という浅瀬域の価値を再認識し、社会的な面から現存している地曳き網漁を沿岸地域の文化とし、海洋との関わり学ぶことから始める。参加体験型で地曳き網やエクスカーション等で地域の古参から過去の経験や地域史を語って頂き考察の場を設ける。堆砂垣・粗朶を使い季節風を利用した養浜活動にて砂浜・砂丘のプロセスを学び、砂丘の植生や渚の生物などがどのような生活を行っているのか、また、この砂浜の指標生物であるアカウミガメの孵卵を事例に砂浜の機能や生産性を学ぶ体験が可能なプログラムを提供する。表浜を現場とし、海浜環境を学び、次世代を担う世代に表浜を環境教育の場とする。また、沿岸で自主的な活動を行っている若い世代の団体と共同で地曳き網漁の再生を図るなど、環境をベースに地曳き網漁のような小規模漁業を通じて海洋を学ぶ新たなる地域のコミュニティを形成し、浅瀬域の保全と共に持続的な沿岸地域の形成を試みる。(表浜海岸からの報告)


EAS Congress2009に於いて:

 東アジア海域環境管理会議2009では表浜の活動報告と共に直接的な海岸の管理方法としてICM、MPAsなど、東アジアの取り組みも参考にしたいと考える。また次期2010年に名古屋市で開催される「生物多様性締約国会議COP10」に於いても海洋・沿岸域は課題とされており、東アジア海洋会議に於いても海洋の生態多様性からの恩恵の維持は重要な課題である。その関連も踏まえ、多様性の保全施策としてMPAsがどのように展開が可能なのか興味深い所である。但し、日本の海岸はICM及びMPAsの実現には困難な面もあると感じられる。特に流砂系として捉えると砂浜海岸を形成する砂の供給源は河川の上流であり水文的に複雑な山間部となる。また利水など、さらなる多目的となる都市部に至っては単純な管理枠で語ることが不可能となる。海岸に関しても同様で港湾の種類や国、県、市町村など多岐に管理が跨る海岸線は常として統合的な施策が困難である。
また、MPAsに関しても、日本では魚種・漁業方法、規模が多岐に渡り、他国に比べて大きな市場を持つ日本では海洋保護という一つの枠組みで協調を保つことが、ことさら困難である。しかし、社会的に困難とされても海洋の保全解決の手法として差異は無く、管理を統合的に計らなければ海岸線が維持できる訳もなく、漁業資源を含む海洋の保護を実施しなければ持続性は見出せない。条件が違えど東アジアとして他国の事例は文化的にも参考になる場合が多いと考えられた。特に東アジア海洋域はASEAN諸国は密接な海域を有し、生態的にも繋がる海洋である。MPAsでのセミナーではタイのNGOがウミガメの回遊圏であるASEANで総合的に取り組もうと提案するなど海洋国としての繋がりを見出している点は参考になった。ベトナムの漁業区がMPAsを中心として成り立っている事例なども興味深く参考となる。日本では漁業区との共存は困難と思われがちだが、MPAsが漁業資源の生産性向上拠点となれば理解が進む。アジア的な海洋の取り組みは東アジアの一員として日本でも可能性があるかと思われる。今回の東アジア海洋会議では日本からSATO-UMI(里海)という概念が紹介された。周りを海に囲まれ、食を支えてきた沿岸域を里山と置き換えた訳だが、山のように介入しなくても、沿岸の浅瀬域は生態層は厚く、実は戦後の漁獲高からも理解出来るが、漁場を放置すれば生産性が上がる。言わばSATO-UMIは自重すれば沿岸の生態系サービスが享受されると言えるのではないか。ICM、MPAsとSATO-UMIの概念を上手く融合させて行くことが、これからの持続性ある沿岸の姿と考えられる。開発が進む東アジアに於いて、漁業や産業を含む沿岸地域と砂浜と沿岸砂州を含む浅瀬域の在り方は経験と現状を踏まえた日本の沿岸から東アジアに関わることは重要な意義があると感じられる。


生物多様性締約国会議COP10開催地として:

 海洋は世界と繋がる環境である。国際間を跨る海域、多様な海岸線を持ち、様々な生態系が棲息し、国際社会も多様な関わりと恩恵を享受している。まさに2010年の名古屋で開催される「生物多様性締約会議COP10」はこの海洋・沿岸域を重要な国際間に跨る課題と捉えている。今回、表浜海岸での活動はその開催地である愛知県では唯一外洋に面した海岸となる。さらに日本全国でも僅かな開放型広域な砂浜として浅瀬域を捉える存在としても重要である。沿岸砂州と砂浜の生産性は今後の沿岸漁業の在り方を考える上でも重要であり、沿岸の取り組みは事例としても有効と考えられる。東アジアにて発信が可能とされた情報を今後の国際的な取り組みに活かすことが出来ればと願う。

今回、EAS Congress 2009に出向する機会を頂き、表浜海岸の事例を伝えることが出来ました。ご理解ご協力頂きました日本財団、東京大学海洋アライアンスと東京大学大学院総合文化研究科清野助教に厚くお礼と感謝致します。

参考文献:
砂浜海岸の生態系 須田有輔 早川康博訳
渥美町史(現代編)葉山茂生 編著
東海農政局 渥美外海漁協漁獲資料(昭和35年~)

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